病院薬剤師のブログ

徒然なるままに。少しづつ勉強していきましょう。

エカベトNa顆粒66.7%回収に感じる違和感

エカベトNa顆粒66.7%「サワイ」が回収となるニュースがありました.当施設でも情報収集,対応を行いました.

 

回収情報のお知らせ|沢井製薬

 

エカベトNa顆粒66.7%「サワイ」を自主回収:DI Online

 

 

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スポーツ

 

 

回収の概要

平成31 3 4日作成,平成31 3 6日訂正となっている資料がPMDAにも掲載され,クラスIIの回収となっています.

回収概要

 

PMDAの回収の分類は下記となっています.

回収情報(医薬品) | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

 

クラスIIとは、その製品の使用等が、一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性がある状況又はその製品の使用等による重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況をいう。

 

包装は下記のものがあるようですが,全て対象となっています.

112(1包1.5g)560(1包1.5g)500g(バラ)

製品の中に,アセタゾラミドが微量に混入しているという事から回収となっています.

 

今回の回収に感じた違和感

今回の対象となった製薬会社の製造する医薬品は,PMDAの検索をしてみると,

取り扱いの件数は418件にも及びます.

ジェネリック医薬品を扱う製薬会社の中でも取り扱う医薬品の品目においては,最も多い製薬会社の一つになるかと思います.

そして,その品目の中には,今回混入の対象となった医薬品である,アセタゾラミドは,含まれていません.

 

PMDAの回収理由の中にも,

回収理由 として

エカベトNa顆粒66.7%「サワイ」について、弊社では取扱いのないアセタゾラミドが、ごく微量混入しているとの情報提供がありました。この点に鑑み、弊社は原薬メーカーの製造段階で混入したのではないかと調査しております。結果が判明するまでの間、当該製品の使用を中止いただくとともに、万全を期すために自主回収致します。

となっています.

 

混入していたアセタゾラミドを,扱っていなかった,という事は,別な理由があるという事になります.

通常医薬品の製造は,工場で薬剤を製造,別な薬剤を製造する場合はしっかり清掃を行い,準備するという事になります.

 

製造工程で誤って他の薬剤が混入したという事例もあります.

 

今回は,対象となった製薬会社で,医薬品として取り扱っていない,アセタゾラミドが検出されたという,考えにくい状況が発生しています.

 

どのような可能性が考えられるでしょうか.

  1. ①製造の工程で,混入した(誰かが,意図的に)
  2. ②製造の段階で既に混入されていた(原薬を含む材料)
  3. ③調剤の段階の混入(調剤薬局で分包の際に混入)

このような可能性が考えられます.

 

①は,おそらく製造工程で,そのようなことが行えるような状況は,ほぼないでしょう.

工場のセキュリティなども考慮すると,これが簡単にできるようであれば,大幅に色々なことを見直す必要がありますし,製薬会社としては大問題となるでしょう.

 

③も,ありえなくもないですが,適宜増減があっても通常11.5gの分包品があり,そちらの使用がほとんどかと思います.

薬剤自体が吸収されないこともあり,分包品を使用しない混合はなかなかないのではないでしょうか?

エカベトNa顆粒66.7% IF

高齢者への投与

本薬はほとんど吸収されず、非高齢者に比べて高齢者で特別に注意する点はないと考えられるが、一般に高齢者では消化器機能が低下しているので、便秘等の発現には注意することが望ましい。

 

ほとんど吸収されないとなっておりますが,吸収されたときの資料がIF上にもあります.

先発品との生物学的同等性が確認されています.

先発品のIFでは

治療上有効な血中濃度:

本剤は胃粘膜局所で直接作用し効果を発現するために,該当しない。

最高血中濃度到達時間:

2 5 時間(エカベトナトリウム水和物 1.0g 単回経口投与)

排泄部位及び経路:

大部分は糞中に排泄される。

排泄率:

健康成人にエカベトナトリウム水和物 1.0g を経口投与した場合,エカベトナトリウム水和物は代謝されることなく,72 時間までに投与量の約3%が尿中に,約 90%が糞便中に未変化体として排泄された。

 

となっておりますので,多少吸収はされますが,効果が胃粘膜局所の直接作用,ほとんどがそのまま糞便中に排泄となりますので,何かの副作用などがなければ,特に増減する必要は考えにくい薬剤となるかと思います.

便秘等が起こった場合に減量となり得るかと思いますが,スポーツをされている選手の方であれば,あまり考えにくいのではないでしょうか.

といろいろ考えてみますと,

 

やはり②が最も考え得る原因ではないかと思われます.

PMDAの回収の概要にも記載があります.原薬の製造段階で混入,ということは考えられるのでしょうか?

 

医薬品が製造されるまで

製薬会社で,医薬品が製造される際に,原薬から賦形剤,添加剤などを用いて医薬品が製造されています.

その製造工場は厳密な品質管理がなされていますが,その工程を確認できる

大塚製薬バーチャル工場見学のHpがとても分かりやすいです.

様々な工程で,医薬品が製造されていることがよく分かります.

医薬品|バーチャル工場見学|大塚製薬

 

実際の製薬工場を見学できる施設もあります.

製薬協Hp,小学生のための薬情報より,見学できる施設があります.小中学生が身内にいないと,少し行きづらいかもしれませんが,興味ある方は是非どうぞ.

 

これらの状況をみますと,薬剤を製造する際には,しっかりとした工程,管理がなされていることがよく分かります.製造するメーカーの最も大切なところになってきます.

ただし,上記の通り,薬効を示す最も大切な原薬に入っていては,製造上いくら注意しても防げないことになります.

原薬に関しては,下記の桂化学株式会社のHpが分かりやすいです.

医薬品原薬とは?原料・原薬・中間体の違い、製造方法について|桂化学株式会社

 

原薬の企業として,その大切さ,使命が理解できます.品質管理の大切さがよく分かるHpです.このような原薬メーカーは信頼できる企業といえるでしょう.

いかに医薬品の原薬が大切か,それが適切に管理できていなければ,医薬品の製造,供給は成り立たないのです.

 

原薬の問題に関する過去の報道

原薬の異物混入についても,過去に様々なニュースがあります

過去の報告で最もインパクト,影響が大きかったのは,アセトアミノフェンの報道でしょうか.

無届けで中国製混入、和歌山の原薬メーカーが一部製品の製造再開 - 産経WEST

 

ファイザー 降圧薬アムバロ配合錠を自主回収 バルサルタン原薬から発がん性物質検出で | 国内ニュース | ニュース | ミクスOnline

 

回収概要

 

アセトアミノフェンの使用が高まる季節の報道で,小児領域での使用という事もあり,大変な対応だったことを覚えています.

 

同時期にアスピリンの供給の問題も重なった記憶が思い出されました…

 

今回の報道は…

エカベト Na 顆粒 66.7%「サワイ」を服用したスポーツ選手のドーピング検査で発覚したとされています.

沢井製薬、胃薬に禁止薬物混入か レスリング選手の違反認定で発覚 :日本経済新聞

 

資格停止処分となっていたようですが,処分が取り消されたとされています.

 

スポーツ選手の方は,特にドーピングについては健康管理上最も気を遣っていらっしゃる部分かと思います.

その中で,全く意図しない状況で発覚した今回の件は,本当にインパクトがありました.

薬剤師の中でも,スポーツファーマシストという資格を取って,このドーピングに関しての正しい情報提供を行っている方もいます.

 

アンチ・ドーピングの歴史|日本アンチ・ドーピング機構 | Japan Anti-Doping Agency (JADA)

公認スポーツファーマシスト ~スポーツの価値を護るアンチ・ドーピング活動~

 

今回,このような形で発覚したということは,とても残念でした.

さて,これからはどうすればよいのでしょうか?

 

これからどのようになっていくのか?

今回の対応は,下記Hpにある対応が全てとなります.

スポーツ競技者の皆様はエカベトNa 顆粒66.7%「サワイ」は原因が分かるまで控えていただく,現在服用されているスポーツ競技者以外の方は,健康被害が及ぶような量ではない.

回収情報のお知らせ|沢井製薬

 

結果がまだ判明していないので対応は難しいですが,原薬への混入が考えられるとなると,同じ原薬を用いている薬剤はどうなるのか,という疑問も出てきます.

 

後発医薬品は,まだまだどの原薬を使用しているのかをオープンにしてくれていない会社もあります.

 

特許の問題などがあるのでしょうか?しかしながら,安全性を確保する,という点では,それ以上に何らかの形で,分かるようにしていただきたいと感じることもよくあります.

 

後発品が発売になる際,10社以上の発売となることもあります.

 

原薬を聞くと,もし原薬が何かしらのトラブルになった際などに供給に影響がでるため,ある程度どの医薬品を選定しようかという事につながります.

 

原薬の確認というのは,今回の件もそうですが,医薬品の供給にとっては最も大切な項目の一つになります.

そして,後発医薬品は,その原薬を自社製造している(もしくは関連の企業)というところもあります.当然供給不足の原薬トラブルがあった場合に,原薬をどこから得ているのか,というところで供給不安定になる可能性があるため,なかなかお教えいただけないという現状もあります.

 

しかしながら,今回の件もそうですが,原薬に問題があり得るような状況となった際の現実的な対応として,原薬の開示,というのは必要になってくるのではないかと感じています.

マスターファイルという形での運用がありますが,なかなか現場では確認しづらい部分もあります.

今後はもう少しわかりやすい状況だと助かります.

 

今回の件で,対象となった製薬会社さんから,原薬の資料をいただきました.ただ,それはその製薬会社のもののみです.

今回の対象となる医薬品は,他にもあと8社あります.

 

今回の事は,最終的な発表がないので,まだどのような形にあるのか分かりません.

 

しかしながら,医薬品の安全性を担保する,そしてこのようなことがこれから起こらないようにするために,対策を考える必要はあるかと思います.

 

一部ですが,製薬会社も原薬を公開してくれているところもあります.原産国の情報もありますので,災害の際の原薬供給などの情報にも重要なものと考えられます.

 

 

武田テバ 原薬製造国を公開 製造販売する後発品で | 国内ニュース | ニュース | ミクスOnline

大原薬品 全製品の「原薬製造元」をホームページで公開

ログイン | 医薬経済社

 

このような情報を公開いただける製薬企業を評価するのは,当然の事でしょう.

原薬についての情報が公開されるのを期待しています.

そして今回の件に関して,一刻も早い解決を望みます.品質管理において,とても大きな懸念事項が発覚したといってもよいのではないでしょうか.